神尾真由子は天才ではなく奇才。と、思う。
指揮 栗田博文
ヴァイオリン 神尾真由子
管弦楽 セントラル愛知交響楽団
プログラム
チャイコフスキー 歌劇 「エフゲニー・オネーギン」より「ワルツ」「ポロネーズ」
チャイコフスキー 懐かしい土地の思い出 op.42 「瞑想曲」ニ短調 <二次予選の曲>
チャイコフスキー ワルツ・スケルツォ op.34 <三次予選の曲>
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.35 <本選の曲>
アンコール
マスネ タイスの瞑想曲
神尾真由子は髪を染めていた。ピンクのドレスに銀の靴をはき、どことなく控えめに舞台へあがる。背中へ流した髪には結ったあとが残っているため、垢抜けていない印象を持ったが、しかし笑顔はとても綺麗だった。
とにかく疲れる演奏会だった。風速百メートルのさなかを、両足で踏んばりつづけているくらいにエネルギーを消耗した。座って音を耳から脳へと響かせているだけなのに。不思議だ。弾いている神尾真由子はどれだけ疲れるのだろうか。体当たり演技ならぬ体当たり演奏で、真正直に曲とぶつかっているような感じである。
ヴァイオリン協奏曲の第一楽章で、拍手がわいた。でも、それでよかった。あのまま息をぬかずにつづいていたら、こっちの身がもたない! 特にカデンツァの高音がふるえる瞬間には、思わず息をとめて、ホールの天井まで飛んでいった音が消えるのを聴きとどけるくらいの緊張感だった。
すごくよかったか、と言われるとわからない。わたしはもっと聴き心地のいい音が好きだ。ただすごくインパクトがあった。これは間違いない。
瞑想曲とワルツ・スケルツォは、オーケストラと呼吸があっていないときがあると感じて気になった。気のせいかもしれない。ワルツとボロネーズはオーケストラのみの演奏で、セントラルの上品な音が楽しめた。ふと見ると、フルートのおじさまが何度も楽器を持ち替えていた。忙しいのね……。セントラルのフルートは、やっぱりとても好き。
それからプログラムが有料だった。三百円。いつも曲目を書き写したら捨てるので買わなかった。どういう理由で有料なのか気になる。
神尾真由子はもう一度、今度はチャイコフスキー国際コンクールの優勝者たちとコンサートを行うようだ。ぜひ行こうと思う。