読み終わると、楡井が好きになっていた。
犯人を推理するミステリーではなく、動機と方法を推理するミステリーだ。特に動機には力がはいっている。また第三者の存在という謎も用意されている。
スキージャンプという舞台へのアプローチが、よくも悪くも、東野圭吾らしい。技術の神秘と、ライバルたちの確執という二点が。綿密な下調べによる情報の展開は、さすがといった感じだ。「天空の蜂」が好きなひとは、楽しめるのではないか。逆もまた然りだ。
雰囲気は暗い。それから東野作品が好きなひとは、第三者の正体が、推理ではなく直感から悟られるかもしれない(笑) ひとりの人間が書くのだから仕方ないが、ちょっともったいない。
前半からラストまで、巧みに興味をひきつける、おもしろいミステリーだった。
選手に楽しみと向上心がある限り、鳥人計画はとうぜんのことだ、とわたしは思う。登場人物の意見はわかれていたが、作者も肯定しているのではないかと感じた。また、ノイズの発想がおもしろいなと思った。